聖ゲオルギウスのイコン
こちらは聖ゲオルギウスの姿を描いたギリシャ正教のイコンです。イコンはイエス・キリストや様々な聖人を描いた画像ですが、正教会においては単なる装飾ではなく、祈りを捧げる聖なるものとされています。厚い木の板に描かれているのですが、その絵を守るために上から金属の「リザ」と呼ばれるカバーをかぶせ、そのリザにも絵を再現した浮き彫りを施し、描かれた顔などの部分だけを出すようにします。こちらのイコンもその作法に乗っ取り、手打ちによる手の込んだ細工が施されています。
ここに描かれている聖ゲオルギウスは古代ローマ末期の殉教者で、彼のドラゴン退治の伝説はキリスト教の聖人の話をまとめた「黄金伝説」に記載されています。異教徒の王に捕えられて棄教を強要されますが従わず、どのような拷問を受けても神のご加護によって無事でした。王が棄教を迫った異教の神殿も倒壊し、その王の王妃までもがゲオルギウスの信念に打たれてキリスト教に改宗しようとします。多分、その王妃と思われるひざまずいた姿が、イコンの右端に小さく描かれています。自尊心を傷つけられた王は王妃を惨殺します。王妃は死ぬ間際にゲオルギウスに「私はまだ洗礼を受けていません。」と訴えますが、彼は「妹よ。あなたが今流すその血が洗礼となるのです。」と答え、昇天を約束された王妃は満足して生き絶えるのです。そしてゲオルギウスも斬首されます。その後、列聖され、現在ではイングランド、モスクワの守護聖人であり、兵士、旅人、農民などの守護聖人でもあります。
このイコンでも古代ローマの兵士のスタイルで馬に乗り、ドラゴンを退治する姿が生き生きと描かれています。
20世紀前半までのギリシャ製。サイズは約9.5×12.5センチ、厚さが約1.7センチです。裏に壁に掛けるための革紐がついています。
古いものですので傷、汚れがあります。