たおやかな手の印章
「その刹那、手はたおやかに天へと伸び、すべては美しい想い出になった。」
(銀色の物語 終幕)
しなやかな手が何かを求めるように、何かを訴えかけるように伸びています。そのあまりにも表情豊かな手は、まるでそれだけで世界と対峙し、世界に向けて語りかけているように見えます。
さて、タイトルでも「印章」と申し上げましたが、実は本当に印章なのかどうか、いささか疑問があります。印章面には"KS"の文字と"110"の数字が彫られています。本来、印章は印影に対して逆に鏡文字のように彫られているはずなのですが、まず110は鏡文字になっていません。その数字を無視してKSをぐるりと逆さにすると一応、鏡文字の位置になります。一部磨耗しており、不鮮明な印影しかとれないのですが、KSという印が押せないこともないようです。しかし、どうも不自然で、これは単なるメーカーズマークで、このお品は素晴らしく印象的なデスクトップのオブジェなのかもしれません。伝言をマークするペーパーウエイトなどにしても、その訴えかける力が大変役立つと思います。さらに、そのメモに「助けて!」などと書いてあったらすごく説得力がありそうですね。
素材はシルバーと思われ、重量感がありますが、ホールマークなどは確認されず純度などはわかりません。しかし黒みを帯びて陰影を増した質感は、この手が本来持つ雰囲気をさらに強調しています。
どうぞすべての疑念は美しい想い出として、この手が語りかける声に耳をかたむけてください。
20世紀初めの頃までのイギリス製。サイズは高さが約8センチです。
古いものですので傷、汚れ、磨耗があります。
こちらの商品は店頭展示品のため、売り切れの場合がございます。また、古いもの性質上、汚れや傷もございます。どうぞご理解下さいませ。