爽やかな若草を思わせるペリドット色のボンボニエールです。蓋と側面に描かれた植物をモチーフにしたエナメルの意匠が生き生きと躍動し、そのタッチは古色を帯びて陰影を増し、とめどなく湧き出ずる生命の神秘的な力強さを感じさせます。それは童話、神話に出てくる魔法の世界から抜け出してきたようでもあり、とても美しいガラスの色味とも相まって、草木萌え出ずる森で演じられる一夜の夢へと誘われてしまいそうです。
ボンボニエールは本来、ドラジェというアーモンドの砂糖菓子を入れて、結婚などの際に来客に渡すための容器でした。
「本を読んでも歴史に聞くところでも、真実の恋は滑らかに運んだためしがない。」
（ウィリアム・シェイクスピア「夏の夜の夢」）
しかし、お客様がこのボンボニエールを手にする時には、きっと大団円を迎えたことでしょう。

19世紀末、アール・ヌーヴォーの時期に製作され、このガラス、手彩色の素晴らしさからチェコ製と思われます。
サイズは直径が約13センチ、高さが約7センチです。
本体が空のままで蓋を開けて手を離すと、蓋の重みで転がってしまいますのでご注意ください。
もし、蓋を開けて飾りたい場合は、本体の底に重さのあるものを入れてバランスをとるとよいでしょう。
古いものですので、擦れや傷、若干の汚れがあります。