アール・デコのマニキュアセット
1930年代、アール・デコの時代のイギリスで作られた、爪にマニキュアをするためのセットです。ケースは深い緑色に金の縁取り、中は美しく深みのある紫のベルベットになっています。金属は全て銀の純度が92.5%以上のスターリングシルバーで、シンプルですがとても落ち着いた上質な雰囲気のお品です。
爪磨きを収める箇所の底に、雑誌か何かの切抜きと思われる女性の絵がありました。アール・デコの時代のファッション画のようで、前の持ち主がひっそりと忍ばせておいたようですので、私どもは触らずそのままにしておきます。このような女性に憧れていたのかもしれませんが、なぜケースの底にそっと置かれていたのでしょうか。
この時期は、20世紀の2つの世界大戦の狭間の「大戦間」とも呼ばれ、ひと時華やぎ、また恐慌からすぐに暗い時代へと滑り落ちて行きました。儚い夢のようでもあり、あっという間に終わる短い狂想曲のようでもありました。
その時代に生きたかつての持ち主は、やはりこのお品のように静かで上品な人だったのでしょうか。そして、ケースの底の切り抜きの女性とともにこの必ずしも平安とは言えなかった時をどう過ごし、その後、どうなったのでしょうか。
古いものを手にする時、同時に、時空を超える想像の世界に遊ぶ特権を手にできるのでしょう。どうぞみなさんもひとつのお品を触媒として、ここではないどこかの世界へお出掛けください。
1930年代のイギリス製。バーミンガムの検定所のスターリングシルバーの刻印があります。
サイズは、ケースが約23×13センチですので目安にしてください。
2つのボトルには化粧品の香りが残っています。古いものですので若干のガタつきや傷、汚れがあり、ケースの内外に跡や傷みがありますが、留め金はきちんと閉まります。