細かく装飾が施された金張りの持ち手、綺麗なガラスの印章面に流麗なフラクトゥールで "HMJ" と刻まれているようです。19世紀中頃、ヴィクトリア朝、イギリスの印章です。
フラクトゥールはドイツ文字とも呼ばれ、中世の写本やカリグラフィーの書体を元にしたものです。少しづつ異なる書体が多数あり、文字をはっきりと解読しづらいのですが、刻まれたイニシャルは前述の三文字だと思われます。
金張りは合金の土台に薄い金を圧着させたもので、金メッキよりずっと層が厚く金の質感がお楽しみいただけます。こちらのお品は古色を帯び、煌びやかな輝きは鈍い光沢へと姿を変えて、その重厚な雰囲気は長い時の流れを感じさせます。
遥か昔、この印章はこのイニシャルを持つ人の懐中時計の鎖を、あるいは胸元を飾り、手紙を書き終えると封蝋の押印にも使われたのでしょう。

19世紀中頃のイギリス製。サイズは印章面が約1.7×1.5センチ、持ち手の高さが約3センチで、チェーンは現行品で長さが約41センチです。
古いものですので傷、汚れがあります。