ごく薄い緑色が美しいガラスに首のない立像が彫られています。よく見ると自分の首を手に持っているようにも見えます。これは「パリのディオニュシウス」、あるいは聖ドニなどとも呼ばれるキリスト教の聖人のようです。
西暦250年頃、彼は異教の地であるガリアに布教に行き、パリで斬首刑に処せられます。切り落とされた首を拾い上げた彼は、数キロを歩きながら説教を続け、ついに倒れた所が現在のサン=ドニ大聖堂の場所であると言われています。サン=ドニ大聖堂には歴代のフランス国王が埋葬されていることでもわかる通り、彼はその後、フランスの守護聖人となったのです。
添えられた言葉は"PEACE IN ISRAEL"「イスラエルの平和」です。このイスラエルは現在の国名ではなく古代のイスラエルを指し、創世記に記されている「イスラエルを祝福するものは祝福される」ということから、それを唱えることで祝福を受けられる言葉として彫られているのだと思われます。
ドラマティックな守護聖人の姿を、透き通ったガラスに含まれる光が神々しく照らし出しているようです。小振りな美しい粒なので、ペンダントなどに加工して身につけても素敵ですね。

1830年までの19世紀初期、イギリス製。サイズは印章面が約1×1.2センチ、高さが約0.8センチです。
古いものですので傷、汚れがあります。