とても重厚で透明度の高いクリスタルガラスに手の込んだ金属の透かし模様の植物が絡められたインクウエルです。蓋にも凝った植物の浮き彫りが施されていますが、そこには冠をいただくN Dの文字が置かれ、聖母マリアを表しています。透かし模様の装飾は薔薇で、こちらもマリア様に捧げられた花でしょう。
透かし模様は銀色が黒みを帯び、蓋はもとは銀メッキだったのでしょう、長年の実用で地金の赤銅色が見えています。どちらも長い時の流れだけが生み出すことのできる、古色を帯びた存在感のあるよい景色と質感です。
また、このインクウエルには以前の持ち主が一緒に使っていたと思われるつけペンがついておりました。こちらは柄に彫刻した装飾があり、素材は牛の骨か樹脂と思われ、その末端が折れて一部失われています。ペン先を取りつける部分は金属で、ペン先を交換することができます。こちらに、このペンについていたペン先をそのままつけておきます。

19世紀から20世紀初頭までのフランス製。サイズは、インクウエルが最大約6.5センチの正方形で高さが約9センチです。古いものですので、傷、汚れや、金属の透かし模様には歪みがあります。
つけペンも同時代のフランス製。サイズは、ペン先を含まない長さが約8センチです。傷やサビ、汚れがあり、前述の通り末端部分が欠損しています。