19世紀半ば、イギリスの印章です。デザインは、全てを見通す「神の全能の目」と言われるプロビデンスの目で、"MAY IT WATCH OVER YOU"「あなたを見守っている」という意味の文言が添えられています。光背をともなって目を描くこの意匠はキリスト教で古くから見られ、後にフリーメイソンの象徴としても用いられましたが、この印章とフリーメイソンの関連は不明です。当時は、フリーメイソンのロンドングランドロッジにおける近代派と古代派の統合も完了し、イギリス内外で発展を続ける途上にあったので、現地のメイソンがこの印章を所有していた可能性はあります。
印章面は光を背負う全能の目に相応しい透明感のある黄色で、黄水晶かもしれませんが正式な鑑定はしておりません。
持ち手もホールマークなどが見られず素材の詳細はわかりませんが、細かい模様が施され、古色を帯びたよい質感の金色を纏っています。植物の模様の一箇所に小さな亀裂がありますが、崩壊するような状態ではありません。

サイズは印章面が直径約1.2センチ、持ち手の高さが約2センチです。チェーンは現行品で長さが約40センチです。
長い時を経て、手紙の封蝋に押す印として使うと同時に、懐中時計の鎖につけたり装飾品として実際に身につけたものと思われます。印章面の周囲に若干の変形があり、文言の冒頭のMと末尾のUが一部見えなくなっています。また、全体に傷や汚れがあります。