デスカード二枚セット
こちらは二枚のデスカードですが、どちらも23歳で亡くなった同じ女性のものです。一方は天使に、もう一方はマリア様に誘われて天へ召される様が描かれています。
残された方々の、若くして亡くなられた方が天へ召されるように願う気持ちがあまりにも強く、葬儀の際に二種類のカードを作ったのかもしれません。
とても珍しい例だと思いますし、しかもその二種類のカードが両方ともここに揃っているのです。前述の経緯には私の想像も含まれてはいるのですが、やはり、この二枚を離れ離れにすることはできませんでした。このような次第でこちらはセットでのご紹介になります。
天使の表情は希望に満ちて少し笑みをたたえ、マリア様の表情は優しさに満ちています。銀のインクを使い、静かな中にもほんのりとした温かみを感じさせる二枚だと思います。
1911年、フランス、パリ製。サイズは約6.5×10.5センチです。
古いものですので、縁などに若干の傷みがあります。
✴︎デスカードについて✴︎
デスカードは亡くなった方のお葬式などで配られるカードで、裏にはその人の名前や生年月日、どのような人柄であったのかの説明、それとお祈りの言葉などが書かれています。意匠も様々で、静謐で厳かで美しいものです。
時々古い聖書に挟まっていますが、これはお葬式の時に記念に配られ、それを聖書に挟んだままにしておき、時々見返して故人を偲ぶ為だと思われます。
デスカードの絵を描いた作者は高名な画家では無いかもしれませんが、どれも美しく工夫が凝らされています。時には稚拙な画力のカードもありますが、悲しみを救いに昇華する為に描かれた絵にはやはり力があると思います。ささやかながら死者の冥福を祈り、生者の慰めを助け、いずれは誰もが逝く時の心の支えになるのでしょう。死を優しく受け入れようとする素敵な文化ではないでしょうか。