花束を持つ天使のデスカード
羽を拡げ天を目指す女性、その顔は表情を面に現すまいとするかのように硬く、しかし僅かな哀しみと、死を受け入れようとする決意が滲んでいるようです。その女性に手を差しのべようとする天使の手には小さな花があります。
当時の名もない画家が描いたものかも知れませんが、人の心を実に見事に表現した絵です。それだけ、今よりも死が身近にあり、当時の人々の心に常に死と死者への想いがあったのかも知れません。このカードは42歳と7ヶ月で亡くなった女性のものです。
1885年、フランス、パリ製。サイズは約7×11センチです。
古いものですので、縁などに傷みがあります。
✴︎デスカードについて✴︎
デスカードは亡くなった方のお葬式などで配られるカードで、裏にはその人の名前や生年月日、どのような人柄であったのかの説明、それとお祈りの言葉などが書かれています。意匠も様々で、静謐で厳かで美しいものです。
時々古い聖書に挟まっていますが、これはお葬式の時に記念に配られ、それを聖書に挟んだままにしておき、時々見返して故人を偲ぶ為だと思われます。
デスカードの絵を描いた作者は高名な画家では無いかもしれませんが、どれも美しく工夫が凝らされています。時には稚拙な画力のカードもありますが、悲しみを救いに昇華する為に描かれた絵にはやはり力があると思います。ささやかながら死者の冥福を祈り、生者の慰めを助け、いずれは誰もが逝く時の心の支えになるのでしょう。死を優しく受け入れようとする素敵な文化ではないでしょうか。
こちらの商品は店頭展示品のため、売り切れの場合がございます。また、古いもの性質上、汚れや傷もございます。どうぞご理解下さいませ。