こちらのブローチは四角い枠に茶色い遺髪が編んで封じ込められ、周囲は黒いエナメル塗り。そこに金文字で「in memory of｣(～を追悼して/～の記憶の限り)の文字があります。追悼用のモーニングジュエリーだと思われますが、そう言い切れない要素もこのお品は孕んでいるのです。

実は、裏に"James and Jesie Stark, 22nd and 30th Nov 1840" と彫り込まれています。この姓が同じお二人の名前、そして近いふたつの日付は一体何を意味するのでしょうか。相次いでお亡くなりになったのか、それとも別の何かを記念してのお品なのでしょうか。

モーニングジュエリーは19世紀イギリスで流行したもので、大切な人が亡くなった折にその遺髪を使い、形見として身につけられました。メメント・モリの思想を汲むもので、故人を悼み、その死を忘れない為のものです。

しかし、髪を使ったジュエリーが全てモーニングジュエリーとは限らず、中には友情や愛情の証として、または一族の絆の証として様々な髪が編み込まれているものもあります。

19世紀イギリス製、サイズは約3.5×2.5センチ、チェーンは現行品で長さ約60センチです。外縁の金色の部分は、ぬめりのある質感から金メッキよりも層の厚い金張りではないかと思います。
古いものですので、全体に若干の汚れがあります。