よい雰囲気の鈍い銀色のケースに、古い天空の絵柄が刻まれています。中のムーブメントは現行品のクオーツの電気時計に入れ替えられています。文字盤上の窓から覗くムーンフェイズも現行品です。

問題は、前面左下の刻印と「95%」の文字です。この刻印はドイツはもとよりヨーロッパのどの国の刻印にも該当せず、ドイツの古い銀製品で純度95%のものはほとんど見当たらないようです。
また、純度を示す際に、通常「%」は使わないでしょう。

というわけで、このケースの表示は、ドイツの銀刻印統一の1886年より前に各都市で使われた刻印か、あるいは銀に見せるために、ひょっとしたら後から打たれたものかも知れません。多分、後者の可能性が高いです。

このケースは合金に亜鉛メッキなどが施されたものだと思われますが、ある程度地金の厚みもあり、それなりにどっしりとした存在感もあります。前述の刻印については「紛い物」と言えるのでしょうが、現実に存在する表示の偽造でもないので、この雰囲気が気に入られた方にお譲りしようと思います。

ムーブメントは単3電池1本で駆動し、24時間以上動かして見ましたが、時刻は概ね正確なようです。ムーンフェイズは動かないようですが、時計として実用できます。裏面の円板を回すと外れて、中のムーブメント、電池ボックスが見えます。

ケースはドイツで製作されたと推定されますが、製作年など詳細は不明です。
サイズは、全体の高さが約18.5センチ、前面の幅が約11.8センチ、台座部分の幅が約14センチ、奥行きが約7.5センチです。