こちらはアンティークのボヘミアンガラスのグラスです。飲み口の直径約8センチ、高さ約11センチで、美しいルビーレッドの円の中に植物や縁起の良い図案が描かれていますが、ひとつの円の中だけ、何も描かれていないのです。

四つの面にドイツ語の言葉と共に吉祥図案が彫り込まれています。1つ目は「Glück（幸福）」という言葉と共に、これはコーヌコピア（豊穣の角）でしょうか、溢れる花や果物が描かれています。2つ目は「Uns Freude（喜び）｣と共に竪琴と楽譜の図案です。3つ目は「Gesundheit（健康）」と共に蛇の絡んだヒュギエイアの杯が描かれています。これはギリシャ神話の医神アスクレピオスの娘、ヒュギエイアが持っていた杯で、薬学のシンボルマークです。蛇は脱皮して若返る姿から、薬と医術による再生を表しています。4つ目は「verlängere das Leben（長寿）」と共に人生の時に関連する糸紡ぎなどが描かれています。そして何も描かれていない最後の円は、手にした方のモノグラムなどを入れるためのスペースのようです。

上記の４つの言葉と何も描かれていない円の謎は、博学な皆様の調査とご教示によって明らかになりました。アンティークには謎解きの面白さもあるのですね。