マイクロフォトグラフ「パリの七つの橋」
このプレパラートの中央にあるものは、顕微鏡でしか見ることのできない微小な写真です。その内容は「パリの七つの橋」と題されており、セーヌ川にかかる橋を一望する風景が写っています。
この技術はイギリスの高名な科学機器製作者、John Benjamin Dancer によって1852年に考案され、このマイクロフォトグラフは、まさにその考案者本人によって製作されたものです。
ガラスの右にロンドン、ストランドの光学機器商"J.H.Steward"のラベルがありますが、その住所にある"The Adelphi Theatre"は1858年に"The New Adelphi Theatre"と改名しておりますので、このマイクロフォトグラフが考案からほどなくして製作されたこと、写っているセーヌ川付近の景色は紛れもなく19世紀中頃のパリのものであることの証左となっています。
研究者のものであった顕微鏡も19世紀になると一般に普及し始め、多くの人々がミクロの世界を目にするようになりました。同時に博物コレクターたちは争って珍奇なものを求め、この顕微鏡写真も大変な人気を集めたのです。この技術は、1887年、ダンサーが亡くなるまではただ珍しいというだけのものでしたが、後にマイクロフィルムとして実を結ぶことになります。1960年、アメリカマイクロフィルム協会は、功労者として彼にダンサー・パイオニア・メダルを授与しました。
19世紀、博物蒐集家の脅威の部屋から現代の情報社会へと繋がる歴史の証人とも言えるお品をどうぞお手元にお迎えください。
1850年代、ヴィクトリア朝のイギリス製で、サイズは約7.7×2.6センチです。
古いものですので汚れや傷があり、画像にも劣化があるものと思われます。弊店にある19世紀の顕微鏡を使用して撮影した画像を載せておりますので、そちらをご覧ください。