博物画「珊瑚」
インクがのった見事な多色刷りリトグラフで、珊瑚などが紹介されています。「貴重な珊瑚」と題されて赤い珊瑚にスポットが当てられていますが、水の中で蠢くタコや魚、イソギンチャクも幻想的に描かれています。まるで手で塗られたような深みのある色彩はとてもソフトでエレガントです。海中にいる生き物たちの生態をカラー写真とも美術絵画とも違う、この時代にだけ存在した独特な手法で見事に表現しています。水の中で霞んでいく遠近感まで描き込んでいるところも魅力的ですね。
本来、博物学とは自然界のものを整理、分類するという学問ですが、「天地間の隅々まであらゆるものを蒐集し、森羅万象のカタログを作る」という情熱こそ博物趣味と言えましょう。当時の一般の人々の知識欲、好奇心の発露が感じられます。
モノトーンの版画に始まる博物画は、19世紀後半、ついにクロモリトグラフによる多色刷りへとたどり着きました。1930年代には姿を消しますが、優雅な絵画的な表現が魅力の多色刷り技法でした。
こちらは、1900年ごろにドイツで製作、出版された博物書籍の挿絵です。表面を覆うハトロン紙は、他のページにインクが付着しないためのものです。
サイズは約17.4×25.1センチです。
古いものですので傷、汚れがあります。
こちらの商品は店頭展示品のため、売り切れの場合がございます。また、古いもの性質上、汚れや傷もございます。どうぞご理解下さいませ。