博物画「ヤドカリ」
海中で活動する生物をその周囲の環境も含めてどう表現するか。その工夫と19世紀後半、技術のピークを迎えた多色刷りリトグラフが出会い、さらに珍奇なものを見たいという当時の人々の欲求がクロモリトグラフの博物画を生み出しました。
こちらはヤドカリで、貝を背負う姿だけでなく、貝の間を移動する様子、貝の中に潜る姿を生き生きと描いています。周囲のイソギンチャクや海草が少し遠く、海水に霞み、海面近くにほんのり光が射す、博物画というにはあまりに幻想的な風景です。カラー写真などと違い、見る人の心に直接訴えかけるような力のある図版です。
本来、博物学とは自然界のものを整理、分類するという学問ですが、「天地間の隅々まであらゆるものを蒐集し、森羅万象のカタログを作る」という情熱こそ博物趣味と言えましょう。当時の一般の人々の知識欲、好奇心の発露が感じられます。
クロモリトグラフは1930年代には姿を消しますが、優雅な絵画的な表現が魅力の多色刷り技法でした。
1887年、ドイツで製作、出版された博物書籍の挿絵です。サイズは約17.2×25.1センチで、付属のハトロン紙は本の他のページにインクが染みないように被せておくためのものです。
古いものですので傷、汚れがあります。
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