金色の金属に見事な透し彫りを施したブローチです。畝り絡み合う植物の中に一羽の鳥がいます。フェニックスとも見えるこの鳥は、その口から燃えるようなエメラルド色の光の塊を生み出しているようです。生命の息吹を感じさせる有機的な曲線の中に、ドラマティックな光景を潜ませた素晴らしい意匠の作品です。
このお品は、もともと懐中時計の中にある「バランス・コック」というパーツだったと思われます。19世紀初頭までの古い懐中時計では、表からは見えない部分にまでこのようなお洒落をしていたのです。その後、それに綺麗に磨いたペーストガラスの粒をあしらって、このような劇的な場面を創造したのでしょう。ペーストガラスも19世紀、ヴィクトリア朝には技術のピークを迎え、天然の宝石を再現するものとして高貴な階級にも広く受け入れられました。
はるか昔の伝説の時代に人知れず起きた奇跡を記したようなブローチを、どうぞ身につけてお楽しみください。

台座のバランス・コックは18世紀から19世紀初頭までのジョージ朝のイギリス製で、その後、19世紀初めから中頃までにブローチに加工したものと推定されます。
サイズは直径約2センチです。
古いものですので傷、汚れはありますが、時代の割にはよい状態です。