博物画「トラ」
インクがのった見事な多色刷りリトグラフで、素晴らしい迫力の二頭のトラが描かれています。身体の躍動とともにたなびく毛並みの一筋一筋、生命を宿すもの特有の毛皮のツヤまで、ただ視覚だけでなく心に訴えかけてくる図版です。さらに周囲の草木の描写も、その匂いや吹き渡る風まで感じられます。現実とも想像ともつかない美しい世界にいつしか心を奪われてしまいます。カラー写真とも美術絵画とも違う、この時代にだけ存在した独特な図版です。
モノトーンの版画に始まる博物画は、19世紀後半、ついにクロモリトグラフによる多色刷りへとたどり着きました。1930年代には姿を消しますが、優雅な絵画的な表現が魅力の多色刷り技法でした。
本来、博物学とは自然界のものを整理、分類するという学問ですが、「天地間の隅々まであらゆるものを蒐集し、森羅万象のカタログを作る」という情熱こそ博物趣味と言えましょう。こちらはドイツの著名な百科事典、ブロックハウス百科事典の挿絵で、製作者は R. Frieseです。当時の一般の人々の知識欲、好奇心の発露が感じられます。
1895年、ドイツ、ライプツィヒで製作されました。サイズは約25×16センチです。
古いものですので傷や汚れがあります。
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