19世紀、研究者ではなく一般の人々も顕微鏡を手に入れ、ミクロの世界を探訪するようになりました。こちらはその時代のプレパラート専用ケースと標本のセットです。ここに入っている30枚のプレパラートのほとんどはアマチュア研究者の手によるものではなく、当時のプロフェッショナルが製作して光学機器や文具の店が顕微鏡などと一緒に販売したものと思われます。ラベルにはエジンバラのW. Watson & Sons、イーブシャムのT.J. Slatter などの名前も見えます。
試料を封印した黒や白のマウント、全体を眼をモチーフにしたデザインの紙で覆ったもの、それぞれに製作者は意図しなかったであろう美しさが漂います。また、説明の筆記体も実に流麗で、それぞれに記載者の特徴があり、思わず見入ってしまいます。
さらに、この木製の専用ケースはプレパラート以上に貴重かもしれません。古い研究室に何気なく置かれていても何の不思議もない雰囲気です。6枚のプレパラートが収納できるトレイが13枚入っています。
19世紀のプレパラートを同時代の箱に納める。博物趣味の魅力は尽きることがありません。

箱のサイズは、外寸が約20.5×10.5センチ、高さが約8.2センチです。トレイには2.5×7.6センチまでのプレパラートが入ります。
古いものですので、ケース、標本ともに汚れや傷みがあり、試料が劣化している恐れがあります。